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にせよウォーターフロントヘの投資者のすべてに対する開示性、包括性、一貫性を重要視している。第二に、カナダの最大都市であるトロントが、そのウォーターフロント関連事業でかかえる公務員の種類は4種、つまり連邦政府、州政府、地域自治体、市町村政府の職員に区分されるという事実により、各行政機関の間で協力体制がとりにくいことが問題となっていた。さらに、どのレベルの行政機関もそれぞれが独立して管理運営し、単一目的のために戦略的利用を目指す土地をウォーターフロントに所有していた。最後に、どのレベルの政府も1990年代の初めに財政能力の限界に達し税金を使い果たしていた。このとき、従来型の開発公社を設立し、これに十分な資金を調達できる政府は皆無であった。

 

また、この事業不振から救い出す力のある民間部門もなかった。1989年から1990年頃にかけてカナダ経済は停滞し、それが3、4年続いた。オンタリオとトロントは特に不景気の煽りを受けた。不動産値が40%下落し市場が壊滅したため、主な土地開発業者は存続できなかった。

 

ウォーターフロント再開発のためには、新たなアプローチを見いださなければならなかった。一つは、前向きな方法として、単一の独裁的な組織を基にするのではなく、共同事業者を募って計画を練ることであった。こうした経緯からウォーターフロント・リジェネレーション・トラストが創立された。

 

今日では、このトラストは小人数の幹部会、ウォーターフロント再開発の環境と経済および地域社会的な面を代表する7人の市民から成る小人数の幹部会を有し、政府から距離をおいた州王立法人となっている。13人の中核スタッフがおり、12人の契約職員がいる。WAVEのように、トラストも政府機関、教育機関、企業、地域社会組織からの出向者(期間は3か月から12年)を雇い、技術と経験を深め、ネットワークを広げ理解を広めようとしている。日本の呼び方でいうと、このトラストは第三セクターに属する。

 

3d 日本におけるウォーターフロント開発の印象
カナダからの訪間者が日本のウォーターフロントに対して第一に抱いた印象は、港湾とそれを取り巻くウォーターフロント地域のどちらもが、巨大なスケールと多様性をもった計画となっていることであった。日本政府は文字通り新しい都市「まるごと」ひとつを、人工の島、すなわち、海面埋立地の上に建設している。おもに家財や産業廃棄物および建設廃棄物、凌渫廃棄物などを埋立用材として使用し、数百ヘクタールの土地を形成している。

 

こうした新都市には多くの特徴がある。未来志向型であり、設計や建築もしっかりしており、周辺都市の道路、鉄道、大量輸送システムとの接続もうまく配慮されている。計画

 

 

 

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